中央アジア・キルギスで女性が元夫に鼻と耳を削がれると言う事件が起こりました。元夫は女性を強姦した罪で執行猶予中でした。
女性は2017年に離婚を申し立て。別居して子供と暮らしており、元夫から付きまとわれ脅迫や暴行を繰り返し受けていました。一連の暴行に対して裁判所が下した判決は3年の執行猶予。女性は提訴しましたが、元夫の要求により裁判は延期。その最中に今回の事件が起こりました。
キルギスでは2008年以降、少なくとも300人の女性が殺害されています。うち75%が被害者の顔見知りによる犯行です。加害者として最も多かったのは夫または交際相手、続いて親族や友人など。全くの他人によって殺害された事案は11%のみ。調査を発表したキルギスの団体は「家庭はキルギスの女性にとって最も危険な場所である」とあらわしています。
近年国際社会では女性が近親者によって殺害される現象を「フェミサイド」(女性を意味する接頭辞「フェミ」と殺人を意味する「ホミサイド」を合わせた造語)と呼び、その他の殺人行為と分けて考える流れがあります。男性と女性で殺人の特性が大きく異なっているからです。男性が被害者となる場合、その理由は主に強盗や武力紛争など家庭外にあります。一方、女性の60%が夫や交際相手によって殺害されていることが2019年の国連による調査でわかっています。
キルギスにはこうした「フェミサイド」に特化した法律はありません。また、2019年に殺人罪が減刑されたことにより、殺人に対し終身刑を適用するには被害者側が殺害行為の残虐性を証明する必要があります。しかし加害者の70%は殺害後に遺体を隠すなどの証拠隠滅を図っており、厳罰を望むのは難しい状況といえます。
キルギス政府によると今年に入ってから8ヶ月の間に近親者による暴力の届出は8,512件。しかし、そのうち裁判に発展した事案はわずか2%といわれています。
鼻と耳を削がれた女性は現在病院で治療中。裁判所は元夫に対する執行猶予を撤回し、8年の禁固刑を命令。元夫は刑務所で服役しています。被害を受けた女性の弁護士と家族は、元夫の扱いをめぐって裁判所に調査と説明を求めるとしています。