FGM シエラ・レオネの通過儀礼から逃れた女性の話

今回は Al Jazeera 紙からシエラ・レオネの女性の話を紹介します。同紙の記述に従って、このブログでは女性を「ファタマ」という仮名で呼びます。

ファタマは10歳になる双子の娘を持つ母。昨年シエラ・レオネからアイルランドに移り住みました。到着した時の持ち物はスーツケースふたつだけ。母国で行われている FGM という慣習から逃れるためでした。

FGM(Female Genital Mutilation – 女性器切除)とは女性器の一部または全部を切除すること、および損傷を加える行為です。陰核の切除や膣の縫合など、内容によって4種類に区別されます。

FGM に医学的根拠や健康的利点はありません。大量の出血、感染症のリスク、排泄・生理・性交時の激しい痛み、出産困難あるいは死産、手術中のショック死など FGM は列挙しきれないほどの危険を伴います。

この行為は国際社会から人権侵害とみなされています。しかし現在も92カ国もの国がこの慣習に従っており、こんにち FGM を受けている女性は全世界に2億人以上いるとされています。

甚大な危険があるにも関わらず各国で FGM が続けられる理由としてWHO(世界保健機関)は以下の文化・社会的要因を挙げています。

  • 慣習に対する社会的圧力
  • 通過儀礼としての信仰(※)
  • 根拠のない宗教的理由

2019年に行われたシエラ・レオネ政府の統計によると、同国に住む15歳から49歳の女性のうち FGM を受けているのは83%。手術を行うグループは Bondo と呼ばれ、女性によって組織されています。

ファタマは15歳のときに FGM を受けたと言います。娘たちには自分と同じ経験をさせたくないと考えましたが、親類から娘にも FGM をさせるよう圧力をかけられていました。2022年に娘ふたりが実の母親によって誘拐され、ファタマは家族で逃げることを決意しました。

知人を通じてアイルランドへの渡航が決まりましたが、家族全員分の費用を工面することはできませんでした。夫をシエラ・レオネに残し、ファタマと娘ふたりはアイルランドに入国。難民申請を行い、1年ほどして申請が認められました。

収入は国からの補助金が月に392ユーロ(約6万円)。支出は551.47ユーロ(約8.5万年)。ファタマはシエラ・レオネで看護師として働いていました。しかしアイルランドで看護師の認可に必要な証明書と申請費用は彼女の手元にありません。

ファタマは奨学金を得てアイルランドの学校で新たに看護師の資格を取ることを考えています。

※ 婚前交渉を防ぐことで結婚相手としての女性の価値を守る、性交時に快感を感じさせないようにすることで貞節を守るなどの考えがある。

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