トランスジェンダーは女性に含めず スコットランド最高裁で判決

今週水曜日、スコットランド最高裁判所が、法律が女性として認めるのは生物学的な女性のみであるとの判断を下した。これにより、トランスジェンダーの女性(以下、トランス女性)など、男性として生まれたが自身の性を女性として自認する人々が、法的な女性の定義から外されることになった。最高裁の判決はイングランドおよびウェールズを含む英国全土で有効となる予定だ。

英国は2010年に制定した平等法(UK Equality Act)により、年齢、性別、人種など様々な事由に基づく差別を禁止している。これには性自認と性的指向(Sexual Orientation / *性的嗜好とは異なる)による差別も含まれており、今後もそういった理由で個人や団体を差別することは許されていない。しかし今回の判決により、トランス女性の受け入れに対する公共施設の態度は変わってくるだろう。

ことの発端は2018年3月、スコットランド議会が公的機関の理事会における非執行役員数を男女半数ずつにすることを義務付けた条例である。この条例においてスコットランド議会は「女性」を現在の性別を認める公的な証明書を持ち、政府から女性であることが認められたトランス女性を含むと定めた。これに対し女性団体が反対し、議会を訴えた。

女性団体の主張は、スコットランド議会の条例は前述の平等法が記した「女性」の定義に反するというものだ。平等法はあらゆる差別を禁止するが、同時に、男女を分けた、あるいは一方の性別のみに利用を限ったサービスの提供を認めている。更衣室や医療機関、DV被害者の保護施設など、プライバシーや心的外傷への配慮などで必要とされる場合があるからである。スコットランド議会が定めた条例は「女性」の定義にトランス女性を含めることで、生物学的には男性である層に女性の機会が奪われるのではないか。さらに公的機関がそのような決定をしたことで、影響が他方に広がり、更に強まるのではないか。これが女性団体が危惧したことだろう。

訴えは「女性は生物学的ないし生まれつきの女性だけに限らない」として棄却された。その後、2024年に当該の女性団体が有志の支援を受けて最高裁判所へ訴えたのが今回の件である。

審議では5名の裁判官が、英国の平等法が指す「女性」は生物学的な女性に限られるべきで、トランス女性を含めるべきではないと判断した。スコットランド最高裁判所のパトリック・ホッジ裁判官は以下のように述べる。

「性別を認められたものとして解釈することは、男性と女性という性別が持つ不可侵の性質を非合理的に犯すおそれがあり、不均一な区別を作りかねない」

ホッジ裁判官は、判決はどちらか一方の勝ち負けではなく、トランスジェンダーの人々の権利は現行の法律で今後も守られるとも加えた。

今回の判決に対し、女性団体は生物学的な性別は変えられないとし、トランス女性の権利のために生物学的女性が犠牲になるべきではないと訴えた。一方、トランスジェンダーの権利団体は、トランス女性も生物学的女性と同じ保護を受けるべきであり、判決は平等法が禁止する性差別に当たると主張している。

出典

https://www.aljazeera.com/news/2025/4/17/trans-women-arent-legally-women-what-the-uk-supreme-court-ruling-means

https://www.gov.scot/publications/gender-representation-public-boards-scotland-act-2018-statutory-guidance-2

https://www.legislation.gov.uk/ukpga/2010/15/contents

・UK Equality Act の和訳は以下の内閣府サイトより引用した。https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/tyosa/h27kokusai/h3_3_1.html

・本ブログでは読み手が区別しやすいように、英語メディアで一般的に用いられる「trans women」と「biological women」の訳語である「トランス女性」「生物学的女性」という呼称を使った。

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