女性差別を論じる際によく引き出される数字として、殺人犯の9割は男性という統計があります。しかし自らの行為により命を失っているのもまた男性だということを軽視してはいけません。
2021年と2022年にフランスで行われた調査から、交通事故による死亡者の78%が男性、うち88%が若年層のドライバーであることがわかっています。交通事故の加害者としては全体の84%、飲酒運転による事故に至っては加害者の93%が男性でした。
この実態を受け、フランス政府は今月8日に交通安全の意識向上を目的としたCMを公開。
父親が新生児に語りかけているのは、交通事故をもたらす「有害な男らしさ」。スピードの出し過ぎ、酒類や薬物の摂取、過度な疲労など。こうした状態での運転が生じる背景として、男性が与えられるジェンダー・ロールの影響を指摘しているのです。
あらゆる世界において、男性は幼い頃から様々な社会的圧力を受けて生きています。優れていること、強くあること、成功者であること、人より上に立つこと。周囲から期待される「男らしさ」は本人に良い影響を与えることもありますが、過剰な自信やトラウマに繋がることもあり得ます。特に父親は男の子にとっての最初のロールモデルであり、その言動は絶大な影響力を持っています。
現在、男性のジェンダー・ロールがもたらす影響については未だ積極的な議論がなされていません。マジョリティであるがゆえに当事者が疑問視しづらいこと、男性学が世界的に普及しているとは言えないこと、提唱者となる人が少ないことなどが理由として挙げられるでしょう。