同性婚と代理出産の倫理的問題

体外受精に保険が適用されないのは差別であるとして、2022年4月 ニューヨーク在住の同性カップルが、市を相手取り集団訴訟を起こしました。同性婚にも「不妊」は認められるのでしょうか。代理母による出産に倫理的な問題はないのでしょうか。ひと組の同性カップルによる訴えは世界的な論争を巻き起こしました。

訴えを起こした同性カップルは男性同士で婚姻関係にあり、そのひとりはニューヨーク市の地方検事です。ニューヨーク市の公務員は市から様々な社会補償が与えられており、体外受精に対する費用の補助もそのひとつです。しかし補償が適用されるのは「不妊」の場合のみとされ、男女間の性交または子宮内受精によって妊娠が不可能であることを条件としています。そのため、異性または女性同士のカップルは補償の対象になりますが、男性同士のカップルには適用されません。

アメリカでは、ほぼ全ての州で代理出産が合法とされており、異性婚・同性婚に関係なく利用ができます。しかし、代理母が依頼者の都合によって中絶を求められることがあるなど、法的・倫理的な問題が指摘されています。欧州では代理出産に対する懸念が強く、ヨーロッパのほぼ全域で営利目的の代理出産が禁止されています。ウクライナは外国人の代理出産を受け入れていましたが、ロシアによる侵攻が始まったことで、代理出産によって生まれた子どもが行き場を失うなど深刻な問題が生じています。

欧米諸国で同性婚が認められるようになってから、代理出産を希望する同性カップルは増えています。訴えを起こした男性は養子を迎えることを考えておらず、その理由を、自分の子どもが欲しいから、養子縁組を支援する団体が同性愛者に対し排他的であるからとしています。しかし主張の正当性を疑問視する声は多く、心理学・女性学者の Phyllis Chesler は、代理出産をしてまで自分の子どもを求めるという考えを「遺伝に対する自己愛」と言って批判しています。

男性は「代理出産は母体を貸してくれる女性の好意で行われるのであって、搾取ではない」と主張しています。しかし、経済的に貧しい女性が富裕者に代わって子どもを産むことはありますが、その逆はあり得ません。これは健全だと言えるでしょうか。

代理出産に関する議論は平行線をたどっています。

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