先月28日に南アフリカの採鉱場で起きた8人の女性に対する暴行事件で、警察は男120名余りを逮捕しました。
事件は、廃坑となった鉱山でミュージックビデオを撮影していたクルーを武装した男の集団が襲撃したというもの。撮影クルーは男性10人と女性12人で、このうちの女性8人が暴行され、それ以外のメンバーも金品を強奪されています。逮捕された容疑者は周辺国から不法に入国した移民であることから、事件に対する国民感情が煽られているようです。
この事件で問題となるのは、まず南アフリカにおける女性に対する暴力の蔓延です。
事件を報道する新聞記事によると、今年に入ってから3か月の間だけで少なくとも10,818件の婦女暴行事件が発生、このうち有罪となったのは8.6%。実際には警察に報告されていないケースもあり、数字は公表の限りではありません。
また、World Population Review による最新調査では、世界で最も女性が危険に晒される国として南アフリカを第1位に挙げています。この調査は女性旅行者への注意喚起として行われたもので、南アフリカは女性が殺害される指数が世界で最も高いことがわかっています。
次の問題は、不法移民に対して高まるヘイト感情です。南アフリカには、廃坑となった鉱山を目当てにした経済的移民が多く集まり、そのコミュニティは地元民から犯罪の温床として批判されています。
不法移民による犯罪は南アフリカに限った問題ではありません。日本でも、技能実習生として入国した外国人がビザ失効後も日本に滞在し、地元農家などから物品を盗むという事件がありました。背景には、入国管理の杜撰さといった政府行政の責任もありますが、社会の縁に追いやられた外国人を無視した結果とも言えるでしょう。
南アフリカで起きた事件は、国が抱える根本的な病を、弾劾しやすい不法移民の問題にすり替えている危険性があります。何か不都合なことが起きると、真っ先に排除されるのはよそ者です。事件の内容は許されるべきものではありません。しかし、なぜそのような状況が起きてしまうのか。解決すべき問題は何なのか。怒りと批判が落ち着いたら、建設的な議論がされることを期待します。