コンゴ民主共和国 紛争再開で性暴力被害が急増

「凄惨な事態が日を追うごとに増えていく。どうして人はこんなことができるのか」2018年のノーベル平和賞受賞者で産婦人科医のデニ・ムクウェゲ(Denis Mukwege)は言う。

中央アフリカに位置するコンゴ民主共和国。ルワンダに隣接する東部の北キヴ州では2022年から国軍と反乱軍との紛争が行われており、州都ゴマ市の避難所には現在60万人以上の市民が生活している。

国境なき医師団が2023年に発表した報告によると、避難所では2週間に670人の性暴力被害者が治療を受けている。毎日48人が新たな性暴力を受けている計算だ。被害者のほとんどは女性で、食糧や木材を求めて避難所の外へ出たところを武装集団などに襲われている。患者の60%近くが被害を受けてから72時間以内に医師団のもとを訪れていることから、状況の深刻さがうかがえる。

コンゴ民主共和国では1996年と2003年の紛争によって多数の武装勢力や強盗団が発生し、国軍との争いが続いてきた。2013年には国軍が反乱軍を制圧するが、2022年に紛争が再開し、今に至っている。特に東部の状況は激しく、現在も100グループ以上の勢力が活動しているという。性暴力はこうした紛争時の兵器として女性や子供に向けられる。

デニ・ムクウェゲはコンゴ民主共和国で産婦人科医として性暴力の被害を受けた女性や子供の治療に当たる人物である。2018年にイラクの人権活動家ナディア・ムラドと共同で受賞したノーベル平和賞のスピーチで氏は開院当初を振り返り、初めての患者は強姦によって陰部を著しく損傷した18ヶ月の女児だったと話している。

「おぞましい暴力は限界なく続いている。毎日5人から7人の女性が新たに強姦されて病院に運ばれてくる。女性や子供を強姦し、傷つけ、それを地域社会に見せつけることで人々にトラウマを与える。性暴力は戦時下における恐ろしい兵器であり、超えてはいけない一線だ。世界は団結して抗議するべきである」

スピーチから6年。国際社会はコンゴ民主共和国を見捨てたように思う、とムクウェゲ医師は話す。国連はコンゴ民主共和国で20年以上にわたり活動を行ってきた平和維持部隊を、年内までに撤退させることを決めた。また、世界有数のコバルト(スマートフォンや電気自動車の主要部品)の産地であるコンゴ民主共和国に対し、経済的利益を損なう懸念から関与を控える諸外国もある。

「人道より経済的利益が優先されることに驚く。環境にやさしいグリーンエネルギーと言って違法に鉱物が搾取され、それによりコンゴ民主共和国の人々が血を流しているようなものだ」

コンゴ民主共和国では再び紛争が始まり、性暴力が兵器として用いられている。6年前よりもはるかに被害者が増えていく中、私たちはこの国を忘れてもいいのだろうか。

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