インド・コルカタ地裁は20日、コルカタ東部の病院に勤務していた女性研修医を殺害した男に対し終身刑の判決を下した。罪状は強姦、過失致死、殺人。最低でも終身刑、最高で死刑が適用される内容だが、裁判官は「極刑を適用するべき稀な事例ではない」と判断した。
事件のあらましは次のようなものだ。昨年8月、インド政府が運営する大学附属病院の一室で、31歳の女性研修医が下半身裸の状態で亡くなっているのが発見された。遺体には複数の外傷と出血があり、夜勤中に仮眠をとっていたところを強姦目的で襲われ、暴行の末に殺害されたと考えられている。
容疑者として逮捕された男は同病院に常駐するコルカタ警察のボランティア職員であった。男は事件以前にも脅迫、ゆすり、女性に対する暴力など複数の事件を起こしており、少なくとも2回の有罪判決を受けている。男は病院内の派出所に配属されており、病棟を自由に出入りすることができたという。なお、女性が所属していた医学部の事務局は女性の両親に対し、本件は自殺であると伝えていた。
本件をめぐっては、加害者に死刑を求める声が各所から上がっていた。死刑が性暴力事件の抑止になることを期待したからである。2012年にデリーで起きた医学生の集団強姦・殺人事件は世界的な注目を集めたが、その後も同様の犯罪は起こり続けている。2022年にインド国内で報告された強姦事件は31,516件、前年から20%の増加である(国家犯罪統計局しらべ)。一方、先に記したデリー事件の加害者4人が絞首刑に処された2020年3月以降、インドでは死刑が執行されていない。
女性の両親は「世界一の人口大国で女性への暴力事件が慢性的に起きている。このことを問題視するためにも、犯人には死刑を下してほしかった」と話している。本件は今後、高等裁判所で審議される見込みだ。
[補足]
・コルカタ事件の判決と同時期に、南インドのケララ州で交際相手の男性を毒殺した女性に死刑判決が下った。罪状は殺人、殺害を目的とする誘拐、人命の損害を目的とした毒薬投与、証拠隠滅。
・被害者の家族は、遺体の状態からして複数名による犯行を主張している。なお、今回逮捕された男は犯行を一切認めていない。
・デリー事件の加害者は6人だが、うち1人は獄中で死亡、1人は犯行当時未成年であったため死刑が適用されなかった。ただし、報道によると反抗時もっとも残忍だったのがこの未成年である。
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