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今週月曜日、ケニアで女性ら9人を殺害したとして男が逮捕された。
男は33歳。被害者を殺害の後、切断した遺体を袋に入れて自宅から100メートルほどの距離にあるゴミ集積場に遺棄したと見られている。当局によると、男は自身の妻を含む女性42人の殺害を自供しているとのこと。
遺体が見つかったのは先週金曜日から今週月曜日にかけて。行方不明者の家族からの依頼を受けて捜索に当たっていた地域住民が、集積所のゴミの山から発見したという。遺体のうち8人は女性であることが確認されているが、残りの1人は性別がわかっていない。被害者の年齢は18歳から30歳。いずれの被害者も同一の手口で殺害されている。最も古い殺害時期は2022年、直近は先週木曜日と見られている。
警察は携帯電話に残された送金記録から容疑者を特定したとしているが、長期にわたる犯行に対しこれまで捜査が行われたことはなかった。遺棄現場から100メートル以内の場所に警察署があったことから、今まで警察の対応がなかったこと、そして遺体が発見されてから3日以内に全ての殺害を容疑者に紐づけたことには疑問の声が上がっている。
本件に対し、ケニア国内の警察を監視する独立機関 The Independent Police Oversight Authority は警察が直接的に関与している可能性があるとしている。
同期間は声明で「遺体にははっきりと拷問と身体切断の痕跡があった」とし、「遺棄現場が警察署から100メートル以内の位置にあること、警察による不当な逮捕・拘束・行方不明が横行していることを考え、当機関の規則に基づき、死亡の状況に関する情報を得るべく緊急捜査班を派遣した」と述べている。
The Independent Police Oversight Authority 公式Xアカウントより
ケニアでは今年6月、政府が進める増税案に対し抗議運動が起こり、警官によって40人以上の市民が銃殺された。人権団体らによると、さらに数百人が逮捕・拘束されており、拷問を受けた者、行方がわからない者もいるという。一方で、ケニアでは女性を被害者とする殺人事件が「国家危機」と称されるほどに蔓延している。今回の事件をこうしたフェミサイド(女性を被害者とする殺人)の一例と見るか、警察の人権侵害行為の隠蔽と見るか、十分な証拠はまだ出ていない。
容疑者の逮捕後、遺棄現場近くの警察署に勤務していた警官は「公平な調査のため」として全員異動させられている。