インドのタブー描くタミル語小説 国際文学賞候補に

インド出身の作家ペルマル・ムルガン(Perumal Murugan)の小説『Pyre』がタミル語からの翻訳作品として初めて、インターナショナル・ブッカー賞にノミネートされました。

インターナショナル・ブッカー賞はイギリスとアイルランドで刊行された翻訳小説に贈られる賞で、過去には韓国、イスラエル、オマーン等出身の著者による作品が受賞しています。

『Pyre』の舞台は1980年代のタミル・ナドゥ。若い男女が都市部で出会い、恋愛の末に婚姻を結びます。夫婦は夫の実家がある小さな村へ帰りますが、ふたりが異なるカーストに属していることを隠し通す必要がありました。同じカースト以外から配偶者を選ぶことはタブーだったからです。

著者はこれまでに、インドに根付く貧困、カースト、男女格差などを主題に11作の小説と5作の短編・詩集を発表しています。2010年の『One Part Woman』は婚外交渉を扱った作品で、刊行当初は好意的に受け取られました。しかしインド国内でのヒンドゥー国家主義が強まるにつれ、ムルガン氏の作品はヒンドゥー教の文化に反するとみなされ猛烈な批判を浴びることになります。弾圧は著者の家宅捜索や出版書籍の回収に及び、2015年にムルガン氏は引退を表明するまでに至りました。

今回のノミネートはムルガン氏の復活であると共に、あらゆる面で周縁化されている存在に光をあてた出来事といえます。

受賞作の発表は5月23日、ロンドンにて。

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