アフガニスタン タリバン新法「悪徳と貞節の法」とは

アフガニスタンの実質的政権を握るタリバンが先週水曜日に新法を施行した。国民の貞節を促し、道徳に背く行いを防ぐことが目的とされている。通称は「Vice and Virtue Law」(悪徳と貞節の法)だ。

新法には以下の内容が含まれている。

  • 女性は公共の場で顔と身体を完全に布で覆い、男性の性的衝動を刺激しないこと。薄い布、短い布、身体の線が外から見て分かるような布は不可。相手がムスリムであるか否かに関わらず、親族・夫以外の男性と会う際も同様とする。
  • 女性の声は性的関係を連想させるものとみなす。したがって、女性は公共の場で声を出してはならない。また、家の中であっても歌を歌う、朗読をすることを禁止する。
  • 女性は親族・夫以外の男性を直接見てはならない。また、男性も親族・妻以外の女性を直接見てはならない。
  • 適切な男性の同伴者がいない女性をタクシーなどに乗車させてはならない。

また、新法はアフガニスタン国内の人物、動物などが写った画像を公開することも禁止している。メディアとジャーナリストの活動を制限し、国内の現状を外国に伝えないようにすることが目的と見られる。これらの規則に違反したものは、タリバン当局により抑留され、処罰を受ける。

2001年、アメリカ同時多発テロの報復としてアメリカは他の欧米諸国等と共にアフガニスタンに対する軍事攻撃を開始した。この紛争はその後20年に渡って続き、2021年8月にアメリカ軍がアフガニスタンから撤退したことで終了した。その後、アフガニスタン全土を掌握し実質的な政権を握ったのがイスラム主義勢力・タリバンである。

タリバン政権における国民、特に女性の抑圧は諸外国の人権団体から「ジェンダー・アパルトヘイト」として非難されてきた。新法施行以前にも、タリバン政権は女性が中等教育を受けること、有償労働をすること、公園・ジム・美容院などへ行くことを禁止している。今年初旬には、1990年代後半の前タリバン政権で行われていた姦通罪に対する刑罰を復活させてもいる。不貞行為を行った女性を、公開鞭打ちあるいは石打ちで死刑にする刑罰だ。

宗教と法律の名を借りた人権侵害行為に対し、国際社会は介入する気配を見せない。アフガニスタンは孤立を深め続けている。

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