アカデミー賞 不正行為多発で規則見直しへ

アカデミー賞を主催する米国・映画芸術科学アカデミー(Academy of Motion Picture Arts and Sciences, AMPAS)が、選考をめぐるプロモーション活動に関して規則の全面的な見直しを発表しました。本ブログでは、規則の要点と見直しに至った背景を解説します。

規則の要点は3つ。ひとつは、アカデミー会員が関わるプライベートパーティーや会合に関する規則の明確化。映画関係者などが個人で私的なイベントを開くことはできますが、映画制作会社や企業による出資・企画・宣伝は認められません。

次に、SNSの利用に関する規則の追加。特定の作品や成果に投票を促す、あるいは妨げる行為が禁止されます。対象となるのはアカデミー会員、映画会社、作品関係者。また、投票者がオンライン上で投票内容や自身の趣向について言及すること、匿名で報道に応じることも禁止行為に含まれます。

最後は上映会について。現行、映画制作会社は選考期間前にアカデミー会員を招いた上映会を4回開催できます。これらの上映会はFYC(For Your Consideration)と呼ばれ、著名人がホスト役を務めることが通例です。今回の規則改正では、ホスト役が第三者もしくはスポンサーでない場合に限り選考期間中に何回でも上映会をして良いことになりました。

全面的な規則改正の背景には、今年度のアカデミー賞に際し不正行為が多発した経緯があります。

改正の直接的な原因と考えられるのが、インディーズ映画『To Leslie』の監督夫妻による不当なプロモーション活動。夫妻は同作のノミネートのためPR会社を2社起用したほか、交流のある有名俳優に働きかけSNS上でサクラ広告を展開。その結果、主演俳優がアカデミー賞主演女優賞にノミネートされました。アカデミーはノミネートの取り消しはしなかったものの、同作のプロモーションに対し内部調査を行うと発表しています。

また、今年度のアカデミー賞主演女優賞を受賞したミシェル・ヨーが投票最終日に他の候補者に対して批判的な記事をSNSでシェアしていたことも懸念事項です。記事はファッション雑誌「Vogue」によるもので、なぜケイト・ブランシェットではなくてミシェル・ヨーが主演女優賞を受賞するべきなのかといった内容。同氏は後日投稿を取り消しています。

『トップガン マーヴェリック』のプロデューサーが自宅にアカデミー会員を招いておこなったパーティーも規則に抵触します。開催されたのは2月。ノミネート作品の発表後にアカデミー会員をパーティーや食事会に招いてプロモーション活動をすることは規約により認められていません。 

規則改正の内容はアカデミーが発表したPDFでご覧いただけます。新規則は次年度、第96回アカデミー賞から適用されるとこのと。

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